
1.筋損傷から再生の過程
筋肉は繰り返し使い収縮を繰り返すと損傷します。損傷すると発熱、腫脹、熱感、疼痛、運動抑制を起こす炎症が生じます。炎症は損傷された組織を取り除き、修復するためには不可欠なのです。筋線維が壊死を起こすと様々な反応が生じ、壊死から約3日後には筋管細胞というものができ、筋線維が再生されます。
筋が損傷してから再生するまでの過程の途中でとどまっているところが筋硬結(こり)であると考えられます。
2.筋硬結(こり)の特徴
①他の部位の触診感と区別可能 ②強烈な圧痛 ③コリのある所から離れた部位に関連痛・関連自律神経反応が出ることがある。④収縮痛(力を入れると痛い)、伸張痛(引き延ばされると痛い)、短縮痛(筋が押し縮められると痛い)、圧痛(押されると痛い)がある。などが特徴になります。
3.短縮痛
筋痛の種類は運動して筋が収縮する際の運動痛(収縮痛)、強く引き延ばされたときの伸張痛、圧迫されたときの圧痛などはよく知られていますが、筋の起始と停止を近づけると短縮痛といういやな痛みが出ることがあります。他動的に縮められても筋線維を構成するアクチンとミオシンが入り込み収縮を起こすと言われています。これを知ると痛みの解釈の幅が非常に広がります。その例は数多くあります。
圧痛の臨床例を挙げます。上肢を背中に回したときに肩の前面が痛いことがあります(図1)。この原因は三角筋に筋硬結があり、上肢を背中に回した際前方に突き出る上腕骨骨頭が内側から三角筋の硬結を押すために発生した痛みと考えられます。
出典:小林紘二『筋性疼痛症候の臨床観察上巻』 MT-MSP勉強会 2017 図1.肩前面の痛み
短縮痛の例をいくつか挙げます。
例1)腕を上げたりねじったりすると肩の隅に挟み込まれるような痛みが出ることがあります。従来ですと肩甲骨の一部である肩峰と上腕骨の骨同士が衝突するインピンジメント症候群と考えられていました。しかしこの現象は腕を上げたときに筋硬結のある三角筋が短縮して生じる短縮痛と考えたほうが良いことがあります(図2)。そのため三角筋にある筋硬結を和らげると症状が消失することが多いのです。
出典:小林紘二『筋性疼痛症候の臨床観察上巻』 MT-MSP勉強会 2017 図2.肩を外転挙上したときの肩の角の痛み
例2)腰が痛くなったときにやや前かがみになり上体を手で支え腰部を丸め、痛めた背筋を引き伸ばした姿位に置くことで痛みが和らぐことがあります(図3)。これは痛めた背筋を伸ばした姿位に置くことで痛みを和らげていると考えられます。
出典:小林紘二 東北手技療法研究会セミナー資料 図3)腰を痛めたときの姿勢
例3)片方の頸が痛いときに反対側のほうに傾けると少し楽になります(図4)。これは痛めた頸の筋肉を伸ばした姿位をとることで痛みを軽くするためと考えられます。
出典:小林紘二 東北手技療法研究会セミナー資料 図4)片方の頸が痛いときの
疼痛緩和姿位
例4)腰椎牽引器で腰椎を引っ張っても骨と骨の間は伸ばされることはないにかかわらず症状が軽くなることがあります。その理由を考えてみます。図5は腰椎牽引をしている時の姿勢です。台に膝から下を乗せ股関節、膝関節を曲げた姿勢で腰椎牽引は行われます。この姿勢では腰部の背中の筋やお尻の筋は伸ばされた姿位になっています。この状態だけでも疼痛緩和姿位になっています。さらに牽引すると前述の筋がストレッチされるため、症状が改善すると考えられます。
出典:小林紘二 東北手技療法研究会セミナー資料 図5)腰椎牽引時の姿勢
ということはこの場合腰痛の症状の原因が椎間孔で神経を圧迫しているのではなく、背部や臀部の筋が原因であると推測されます。
人は腰が痛いとは言うけれど、お尻が痛いとはあまり言わないと思います。筆者の臨床研究では腰の痛みを訴える人の半分は腰部の背中や近辺の筋が原因で、もう半分はお尻の筋が原因であるという結果になりました。
腰や肩、膝の痛みでお悩みの方は当院をお訪ねください。
つくば市 腰痛・痛み マッサージ・はり・運動療法
みどりの鍼灸院
次回は関連痛(関連感覚)について説明します。