
関連痛とは体のある部分が悪く痛みがあるとその部位以外の離れたところに違和感や痛み・しびれとして感じる現象です。内臓からの関連痛はよく知られています。例えば胃が悪いと背中の脊柱の近くにコリや違和感が出てくることがあります。
この関連痛は筋肉にもあります。体全身の1つ1つの筋肉に生理食塩水を注射しそこから離れたところに生じる関連感覚・関連痛を全身の筋肉について調べた人が、Janet G. Travell,とDavid G. Simonsです。成書になっており日本語訳にもなっています(川原群大監訳 トリガーポイント・マニュアル : 筋膜痛と機能障害 訳 エンタプライズ, 1992.3)
例1)腰痛の時によく悪くなる腰方形筋の筋硬結を強く圧迫すると図1のようにおしりのほうに関連感覚が生じることがあります。
出典:Janet G. Travell, David G. Simons[原著] 『トリガーポイント・マニュアル : 筋膜痛と機能障害』川原群大監訳 エンタプライズ, 1992.3 図1)×印が生理食塩水を注射した腰方形筋。
黒塗りが関連感覚
つまりお尻が痛いとの訴えで、まずお尻に悪いところがあるかを調べます。そこに問題がない場合その上の方に問題がないかを調べてゆきます。腰方形筋に筋硬結を見つけそこを押してお尻のところに響いたら、それが症状の原因と考えられます。
例2)手にしびれや違和感がある場合、頸椎の椎間孔で神経が圧迫されているかを見るために頸を傾けて頭の上から圧迫する椎間孔圧迫試験(スパーリングテスト)が行われます(図2)。このテストで頸部に痛みが発生したり手にしびれや違和感が出たりすれば頸椎の椎間孔で神経が圧迫されていると判断され、椎間孔を拡げ神経圧迫をとるため頸椎の牽引などをします。
出典:田崎義昭他著『ベッドサイドの神経の診かた』南山堂, 1994 図2)スパーリングテスト
ところが手より上のほうにあり手に関連感覚を生じる筋肉は色々あります(表1)
棘上筋 | 烏口腕筋 |
棘下筋 | 三角筋 |
小円筋 | 肩甲下筋 |
広背筋 | 大円筋 |
鎖骨下筋 | 小胸筋 |
上後挙筋 | 胸骨筋 |
頸部の筋 | 前鋸筋 |
例えば頸の横にある中斜角筋からの関連感覚が生じるところは図3)のようになります。
出典:Janet G. Travell, David G. Simons[原著] 『トリガーポイント・マニュアル : 筋膜痛と機能障害』川原群大監訳 エンタプライズ, 1992.3 図3)中斜角筋からの関連感覚
手にしびれや違和感があった場合まず症状のある部位に問題がないか調べます。そこに問題が見つからなかったら順に上肢の上に向かって手から腕、椎間孔迄の間に異常があるかどうかを調べてゆきます。また背中の筋からも手に関連感覚が生じることがあります。つまり手のシビレの原因は頸椎の椎間孔のみが原因ではない可能性があるということです。
腕や手のシビレや痛みでお困りの方は当院をお訪ね下さい。
つくば市 腰痛・痛み マッサージ・はり・運動療法
みどりの鍼灸院
次回は筆者が行っているあん摩マッサージの理論と方法(筋硬結の治療、限界、体内麻薬、内臓からの痛み)について紹介します。