筆者が経験した症例の紹介(症例1、2)

山形県米沢どんでん平百合園

症例1)長年の同一作業が原因と考えられたケース

右頸肩腕(くびかたうで)症候群、男性、51歳

病歴

半年以前より右頸部~後頭部が手を挙上したり、重いものを持ったりするとビリッとする

所見

頸椎6/7椎間腔狭小、第6頸椎後方に骨棘あり、脊椎症が軽度認められる

仕事・作業

エンジンシャフトの焼きいれ、10Kgほどのものを下から上に持ち上げる作業を長年していた

評価

上部僧帽筋付着部、右上背部の硬結
僧帽筋上縁、斜角筋前部線維を圧迫すると右後頭部に放散痛を生じる

理学療法

頸にホットパック、頸椎牽引後硬結筋をもみほぐした。

経過

理学療法直後に症状軽快したが、その日の夜に飲酒後、頭痛が激しく出現し救急外来へ行った。

後頭部下縁や右背部上部の硬結は長年10Kg程度のエンジンシャフトを床から上に持ち上げていたことで上部僧帽筋、斜角筋、背部上部を損傷し、同部に筋硬結が認められた。それらの筋を温め、頸部をストレッチし、ほぐしたことで頭部の症状が軽減した。

考察

上部僧帽筋の起始部は後頭部にあり、その下を後頭動脈が通っている(図1)。

硬結は上部僧帽筋の起始部にあり、そこをほぐしたことで後頭動脈の圧迫が減り後頭部への血流が増加したと考えられる。長年圧迫を受けていた後頭動脈は細くなっており、圧迫部を解除したことと飲酒が相まって細くなっている動脈に急激に血液が流れ込み、血管を拡張したために急激に生じた血管拍動性の頭痛と考えられる。

図1)後頭動脈の走行

症例2)右脊柱~肩甲間の痛みを訴えた成人脳性麻痺

頸椎骨軟骨症、脳性麻痺、男性、31歳

病歴

3年程前から肩~背部が痛くなり夜も寝られない

評価

肩~背部圧痛、右側頸部筋の圧痛・硬結、右手関節から遠位のシビレ、頸椎カラーで症状軽減

理学療法

頸椎牽引、右側頸部・肩上部・菱形筋のマッサージ(筋・筋膜摩擦伸長法)

経過

症状は軽減した

考察

頸椎カラーによる症状の軽減の理由として頸椎カラーによって頸部を支える筋群(頸部の筋や背中の筋)の負担が減ることで伸張反射が出にくくなり、頸部や肩、背中上部の過緊張筋の収縮痛の軽減が起こったと考えられる。

症例は電動車いす使用の右上肢のみが自由に動かせる重度の成人脳性麻痺である。

右手だけを使用したマウスの操作で設計の仕事をしており、右の僧帽筋、肩甲挙筋、菱形筋が持続収縮し、過度に負担がかかっている。

頸椎牽引は頸部の筋には影響を及ぼすが、肩や背部の筋には効果が考 えにくい。そのため肩、背中上部の筋硬結の認められる筋群を和らげることで主訴の痛みが軽減したと思われる。


痛み等でお困りの方は当院をお訪ねください。

つくば市 腰痛・痛み マッサージ・はり・運動療法

みどりの鍼灸院


次回は原因を考えさせられた症例を紹介します。

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