IDストレッチング

小鬼百合

1.IDストレッチングとは

この方法は鈴木重行氏が提唱したストレッチの方法で、成書として「鈴木重行編 Individual Muscle Stretching ストレッチング 三輪書店 2010」があります。

従来のストレッチング(以下ストレッチと略す)では選択的な筋ストレッチが困難であるため、コリのある筋や、緊張筋、損傷された筋を個別に引き延ばすIDストレッチングにより、よりストレッチ効果を上げることができる。という概念で工夫されたものです。

個別的筋伸張法(IDストレッチング)と命名され、従来のストレッチに比較し目的とする筋を狙った方法のため、より効果的にストレッチ効果があげられるようになりました。しかし解剖学的知識が十分必要になります。

2.ストレッチの限界と対策

どのような方法のストレッチでも限界があります。その理由として以下ことが考えられます。

(1)硬くなっている筋(硬結)はストレッチで十分に引き延ばされない。

筋の一部に硬くなっているところ(筋硬結、コリ)がある場合、筋硬結を圧迫すると痛みを発します。また筋硬結の周りは血液循環が悪くなっており、筋硬結のある筋は全体的に少し縮まっている可能性があります。

痛みや愁訴を出しているところはこの部分のため、これを引き延ばして柔らかくしてやることが目的になりますが、ストレッチだけでは硬いところはあまり伸ばされず、周辺の柔らかいところばかり伸ばされてしまうことが考えられます。

図1.ストレッチと筋硬結

(2)筋走行は三次元的構造をしている

解剖書では筋線維の方向を模式的に書かれていますが、実際はほとんどの筋線維は骨の長軸に沿ってまっすぐには走行しておらず、いろいろな方向に走行していることが判っています(河上啓介 小林邦彦編:骨格筋の形と触察法)。そのため一つの方向だけのストレッチでは十分に伸ばされない筋線維が生じてしまいます。

ところが関節の動かせる方向は決まってしまいます。そのため、関節の動く方向に沿っている筋線維は効率的に引き延ばされますが、異なった方向に走行している筋線維は十分に引き延ばされません。

(3)筋の一部が隣の筋と連結している

筋は骨から骨についているとは限らず、筋線維の一部は隣の筋線維、筋膜、筋間中隔、靭帯、関節包などの軟部組織にもついています。場合によっては拮抗筋にも一部連結しており、引き延ばしても柔らかい組織に連結している筋線維の部分は十分にストレッチされない可能性があります。

図2.筋連結
出典:河上敬介、小林邦彦編『骨格筋の形と触察法』 大峰閣 1998

以上の筋硬結に対する限界は従来のストレッチではもっと大きくあったのですが、IDストレッチングは問題のある筋を特定してそこを狙って行うという点で、従来の方法より効果が高い方法です。ストレッチング一般の欠点を補う方法として

  1. 筋硬結部分は直接圧迫・揉捏して柔らかくし、温める、物理療法で刺激する、鍼をする等をして、そののち筋全体をストレッチする。
  2. 1つの筋をストレッチするにはいくつかの方向に伸長する。

等の方法が良いと思われます。


ご自分に合ったストレッチ方法が知りたい場合は当院をお訪ねください。

つくば市 腰痛・痛み マッサージ・はり・運動療法

みどりの鍼灸院

次回は大関節に対する具体的なストレッチの効果的な方法について説明します。


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