ファシア、筋膜の連続性

尾瀬ヶ原の草紅葉


ダニエル・キーオン著「閃く経絡」須田万勢・津田篤太郎監訳、医道の日本社 2018. の内容に沿って説明します。

1.ファッシアとは

臓器を包んだり、臓器と臓器の間を埋めたりする結合組織のことで西洋医学ではほとんど注目されていませんでした。

発生学では皮膚と神経系を形成する外側の部分(外胚葉)、消化器と分泌腺を形成する内側の部分(内胚葉)(卵黄嚢)、その他、血液、骨、筋膜、筋を形成する中間の部分(中胚葉)に分けることができます。卵子という一個の細胞が何億もの細胞に分化し色々な組織になっていくのですが、ファッシアはそれぞれの臓器の輪郭をはっきりし、内部に閉じ込める役割をします。ファシアのうち筋肉を包んでいるのが筋膜(図1)になります。

ファッシアの主成分はコラーゲンで物が変形するときわずかな電流を発生させる圧電性の特性(ピエゾ効果)があります。またコラーゲンは電気を生むだけでなく、伝導性も持ちます。「閃く経絡」ではファシアと経絡、経穴(ツボ)との関係を説いています。

図1.筋膜の構造

2.内臓からの関連痛

図2.関連痛・関連感覚の機序

従来の説明では内臓からの感覚情報が脊髄に伝わりそこに来ている皮膚や筋からの感覚線維に伝わり脳ではどちらからの痛みだか判別できない(輻輳投射)、あるいは皮膚や筋からきている感覚線維が敏感になり脳でそこの痛みと勘違いする(輻輳促通)というメカニズムで説明されています(図2)。

ところが「閃く経絡」内臓からの関連痛は脳が混乱しているのでではなく、ファッシアが伝達していると説明しています。例えば心臓が悪いと左肩や左腕に違和感が出る現象があります。これは顔と腕につながる主要動脈の通路に沿って痛みが放散しているという説明になります。また虫垂炎は腹部右下にあるファッシアが腸間膜を介して、臍の高さの背部の正中線へ走行しており、虫垂炎が腹壁のファッシアを刺激すると痛みはそちらに移る、としています。

3.筋膜の連続性

筋膜は体中の筋肉に張りめぐされていますが、
Thomas W. Myers著「ANATMY TRAINS」によると連続性の高い筋膜の列(筋筋膜経線・図3)を9種類に分けています。

図3.筋膜のつながり

そのうち頭部にきている筋筋膜経線としてスーパーフィシィアル・バック・ラインは趾骨底面から前頭骨・眼窩上隆起に、スーパーフィシィアル・フロント・ラインは趾骨背面から乳様突起・頭皮に、ラテラル・ラインは第1,5中足骨から後頭骨稜・乳様突起に、スパイラル・ラインは第1中足骨底から後頭骨稜・乳様突起・軸椎横突起に、スーパーフィシィアル・バックアーム・ラインは手指背側面から後頭骨稜・項靭帯に来ています。

従って頭や頭皮の刺激はこれらの筋筋膜経線を通して体の色々なところに影響を与えることが考えられます。

次回は顔にある表情筋、食物をかむ咀嚼筋、眼・舌を動かすことと美容に関しての説明をします。


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