筋膜ラインと経絡の共通点(後半)

庭に来たヤマガラ

前回の続きになります。前半はこちら↓

■ 画像出典元 ■

代田文誌 著「鍼灸治療基礎学 : 十四経絡図譜解説 改訂増補第7版」 医道の日本社 1969

トーマス・W.・マイヤース 著「アナトミー・トレイン : 徒手運動療法のための筋筋膜経線 第3版」医学書院 2016

5.足の陽明胃経、任脈とスーパーフィシャル・フロントライン

足の陽明胃経は瞳孔の直下2cmから胸郭、腹側正中のやや外側、下肢のやや外側を通り足の第2趾の先まで行きます。任脈は眼の下から始まり顔と腹側体幹の正中を通り肛門近くまで行く経絡です。スーパーフィシャル・フロントラインは頭皮筋膜から乳様突起、胸鎖乳突筋から体幹前面下肢前面を経て、両側の足趾背面まで行きます。

図5.足の陽明胃経、任脈とスーパーフィシャル・フロントライン

両者は頭部のところで違いがあるようです。しかし足の陽明胃経の顔面をよく見ると目のほうに行く支線があることが判ります。

6.足の太陽膀胱経、督脈とスーパーフィシャル・バックライン

足の太陽膀胱経は眼の内側から背中と下肢の後ろを通り足の小指に至ります。督脈は頭のてっぺんから尾骨までの脊柱の中心を通る経絡です。

スーパーフィシャル・バックラインは前頭骨、眼窩上隆起から後頭骨稜、脊柱起立筋を経て、足裏の趾骨底面につながります(図6)。

図6.足の太陽膀胱経、督脈とスーパーフィシャル・バックライン

7.足の少陽胆経とラテラルライン


足の少陽胆経は眼の外端から起こり側頭部・後頭部をめぐり体幹外側、下肢の外側を通り足の第4趾に終わります。ラテラルラインは後頭骨稜、乳様突起から体幹外側・下肢外側を通り第1中足骨と第5中足骨底に終わります(図7)。

図7.足の少陽胆経とラテラルライン

8.足の太陰脾経、足の厥陰肝経とフロント・ファンクショナル・ライン

足の太陰脾経は足拇指の先の内側から起こり、下肢の内側を通り腹部のやや外側、胸郭を通りのどに来ています。ファンクショナルラインは主に運動やスポーツに機能し全身のバランスを保ち、アームラインの延長になり、バック・フロント・同側の3種類があります(図7)。そのうちフロント・ファンクショナル・ラインは上腕骨体から胸郭を通り恥骨結合から反対側の長内転筋に来ています。足の太陰脾経、足の厥陰肝経は同側のながれですが、フロント・ファンクショナル・ラインとバック・ファンクショナル・ラインは恥骨結合や仙骨で交差しています。流れは左右あるので交差しない流れが経絡で、交差している流れがファンクショナルラインと考えると、三者の流れの類似性が認められます。

図8.足の太陰脾経、足の厥陰肝経とフロント・ファンクショナル・ライン


以上経絡とアナトミートレインの類似性を見てきましたが、要約すると

  1. Tomas W. Myersの著した「ANATOMY TRAINS」の筋膜の流れと経絡の流れはかなり類似性がある。
  2. 足の少陰腎経に類似しているアナトミートレインの流れはない。
  3. 筋膜はファシアの一つでありファシアは筋肉以外の臓器を包む膜でもあるので、筋膜の流れだけでは経絡の流れを説明するには十分ではなさそうである。
  4. 現時点では筋膜の流れと経絡の類似性は高いと考えられる。


また難しい話が続きましたが、来年のはじめは牽引について説明します。


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