
肩甲骨でなく肩甲上腕関節(狭義の肩関節)が悪くなってももちろん肩甲上腕リズムは正常から逸脱してきます。
1.肩甲上腕関節の構造
図1は上腕骨を外した方向から肩甲上腕関節を見たものです。色々な筋の切断面を観察できます。

2.肩関節の関節包
肩峰上腕関節の関節包は上腕骨と肩甲骨を連結し可動性、安定性、運動の誘導の役割があり肩関節の運動の際に制限因子になります。
関節包は何層ものコラーゲン線維からなり、Scapula plane(肩甲骨面)上30°付近で全関節包の緊張はつりあい、あらゆる方向への関節の遊びが保たれます。
3.肩甲骨面とは
出典:中村隆一他「基礎運動学第6版」、医歯薬出版、2003 図2.肩甲骨面:青線の延長方向
肩甲骨は丸みがかった胸郭の上に乗っているため体の前額面に対して約30°~40°傾いている。この面をスキャプラプレーン(Scapular plane)「肩甲骨面」「肩甲平面」という(図2、3)。図2は頭の上から肩甲骨と鎖骨を見たものです。
出典:金子丑之助著「日本人体解剖学 第一巻」、南山堂、1956 図3.肩甲骨面:
肩甲骨は背中の真後ろでなく
斜めについている。
4.Inner muscleとouter muscle
肩のouter muscleは大胸筋、三角筋で強い力を出すことができるが、上腕骨骨頭を上に持ち上げたり関節面からずれたりする力が働き、そのために骨頭が関節面にあたり十分な可動域が出なくなりパーフォーマンスが落ちる可能性があります。その骨頭を肩関節面の正常な位置に保つのがinner muscleで、腱板筋(棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋)であり肩甲上腕関節の安定化の中心的役割を担います。outer muscleはinner muscleの働きを基盤としてスピード、パワーを十分に発揮することができます(図4)。outer muscleとinner muscleのimbalanceが肩甲上腕リズムの破綻をきたし肩関節疾患の原因となることがあります。
特にinner muscleの弱化が問題になります。

5.評価・検査
- いろいろな肢位で挙上、外旋,内旋抵抗運動による疼痛誘発テスト
- 可動性、運動能力、保持能力の評価
- 肩甲骨の動きを制限した状態で肩の内・外旋筋力を評価し、機能障害部位の予測
6.inner muscleのみの強化法
以下の運動は力を入れすぎるとouter muscleも働いてしまいます。従って力を入れずに頑張らず軽い気持ちで行います。三角筋や大胸筋を指で触りながら収縮を起こさない程度の強さで行うと力の入れ具合がわかりやすいです。
棘上筋強化(図5)
Scapular plane上、上肢下垂位から45°挙上までやや前方に外転する。

(上肢をやや前方で外転する=肩甲骨面)
棘上筋強化(図6)
腋窩にやわらかいボールまたはクッションを挟む、Scapula plane上45°挙上位から上肢下垂位まで肩甲骨挙上と共に内転運動をさせる。
棘上筋は体に近い範囲で、外転にも内転にも働きます。

棘下筋、小円筋、肩甲下筋強化
上腕をやや前方で外転しておき、浴槽の中で肘を90°曲げ前弯を左右に動かす。
肘を90°曲げうちわを手で持ち仰ぐ(図7)。
両方とも肘をなるべく動かさない。強くやる必要はない。

棘下筋、小円筋強化
おなかにタオルをたたんで置き手で押す(図8)。肘はなるべく動かさない。強く押す必要はない。

肩の不調や肩こり、背中のコリ等でお悩みの方は当院をお訪ねください。
次回からは山本高穂、大野智著「東洋医学はなぜ効くのか」、BLUE BACKSの内容を何回かに分けて紹介します。


