
診断名
変形性頸椎症、両側凍結肩 女性、63歳
現病歴
4ヶ月前胆石症のため胆摘出術。1ヶ月で退院直後肩から指先に痛みシビレ出現。投薬、湿布したが次第に悪化し、内科⇒整形外科⇒リハ科併診。
症状
右肩から手に痛み・シビレ。食欲なく脂肪分取れない。
第3~6頸椎が前から鞘嚢で圧迫されている像がみられる。
第5頸椎変形、第5と6頸椎の間が狭くなっている。
病的反射(-)、ジャクソン(図3)・スパーリング(図2)テスト陽性。

頸を側屈して頭の上から押すと
手にしびれなどが生じる

頸を反り頭の上から圧迫すると
手にしびれなどが出る
両側の腱板筋(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋が集まった腱)、上腕二頭筋、上腕三頭筋、背部筋に圧痛がある。全身的に硬結・圧痛が認められる。
自動的関節可動域
肩屈曲 右90°、左120°
肩外転 右70°、左80°
手の筋の不随意な痙攣。
階段昇降時に膝がぎしぎしする。
以前50肩をしたときは限局した痛みだったが、今回は全身的に調子が悪い。
身長153cm、体重は入院前42Kg、入院中37Kg、現在40Kg
理学療法
ホットパック、頸椎牽引、マッサージ(筋・筋膜摩擦伸長法)を行った。
経過
57日間、18回治療後、自動的関節可動域は肩屈曲 右125°、左130°、外転 右115°、左120°に改善した。
考察
消化器系の術後に腰痛、手足のシビレ感、虫歯などの骨・関節障害の発生の報告がある。この方は胃切除後の食事量低下、胆摘出によるカルシウム・脂肪の吸収障害が考えられる。また消化器系に疾患のある患者は術前から体力低下や栄養障害がある可能性がある。
ビタミンDは脂溶性ビタミンであり腸内でカルシウムの吸収を助け脂肪の多い食品に含まれる。
この方は元来小食であり、痩身であった。加えて入院中の体重減少により栄養状態が悪化したと思われる。
胆摘出による脂肪消化の悪化しカルシウム吸収不足、ビタミンD不足になった。骨を丈夫にするにはカルシウムやビタミンD, 日光浴、運動などを勧めた。

筋細胞が収縮・弛緩するには細胞内外のカルシウム濃度差が一定に保たれた状態でカルシウムを出し入れすることで行われる。この方はカルシウム不足によるカルシウムパラドックスにより骨からカルシウムが溶け出し、一定のカルシウム濃度差のバランスを崩したため、筋緊張が全身に及び、両側性の凍結肩、手のシビレなどが生じたと考えられる。
従って
- 対症的には上半身を中心に循環をよくし、筋緊張を緩める
- 根本的には日光浴、カルシウムやビタミンDを多く含む食品を摂取することが良いと考えられる。
痛みやしびれの原因がわからずなかなか取れない方は当院をお訪ねください。
つくば市 腰痛・痛み マッサージ・はり・運動療法
みどりの鍼灸院
次回は頸・肩・腕・手の痛み・しびれと対処法(1)について紹介します。