
1.筋硬結(こり)ができる原因
筋硬結(コリ)は運動等により筋線維が損傷した後、再生が途中で止まっている状態と考えられます。その原因として
- 長時間の座業による等尺性収縮
- 外傷による筋損傷
- 不良姿勢による特定の筋への負担
- 何らかの原因で筋が緊張する
- 精神的緊張で筋の緊張が続く
- 繰り返し同じ部位にストレスがかかる
等があります。
2.筋硬結発生のメカニズム
図1を参照してください。

3.運動はしていないのに筋硬結はなぜできるか
筋は使うと収縮します。そうすると毛細血管はわずかの圧迫でつぶれ筋を栄養する血液が途絶えてしまいます。図2はその仕組みをフローチャートで説明したものです。

筋の収縮・弛緩にはカルシウムイオンが筋細胞に出たり入ったりします。そのエネルギー物質としてATP(アデノシン三リン酸)が必要となります。ATPの産生には酸素が必要で毛細血管が長い間つぶれ循環不全が続くとその部分のATPが枯渇し筋の収縮弛緩がスムースに起こらないため筋緊張が生じ、血管内の疼痛増強物質や発痛物質の生成を助長してしまいます。
運動している筋は収縮と弛緩を繰り返します。(等張性収縮)その運動を行なえるためには支点が必要です。支点の周りの筋は等尺性収縮をして支点を固定する必要があります。
わずかな運動をする(作用点)ためにも、それを支える体の部分(支点)が必要です。手で書き物をする、ダイヤルを回す⇒そのために手首が支点になり、手首がぐらぐらしないように肘、肩が動かないようにする⇒そのために肘回り、肩回りの筋は等尺性収縮をします。肩がぐらぐらしないようにするには⇒肩甲骨が動かないように、体幹が動かないようにします。座業をする際に体幹が動かないようにするために体幹が等尺性収縮し⇒椅子が動かないように椅子が動く場合は両足で椅子が動かないように力を入れます。“つまりわずかな運動をするために色々なところで筋が等尺性収縮をする必要があるのです。”
筆者はつくばに住んでいます。つくばにはJAXA(つくば宇宙センター)があり、打ち上げる予定の日本の研究棟内を見学したことがあります。かまぼこ状の建物で壁の横と上に色々な計器が埋め込まれています。天井部分に計器が埋め込まれていても、宇宙では無重力なので上下はなく不思議ではないのですが、よく見ると一つ一つの計器の下に足をひっかける小さい枠がついています。宇宙では無重力なので計器のダイヤルを動かすと体全体が回転してしまいます。そのために足を固定する必要があります。ほんのわずかな作業でも固定するところが必要なのです(図3)。

最近はテレワークを行う人が増えています。また日本人は世界一座っている時間が長いといわれています(岡 浩一郎 座りすぎが寿命を縮める 大修館書店)。女性で座り仕事の多い人は総死亡率、がんの死亡率が高いことが判っています。
長時間、長期間座業をしていると重力に抗して姿勢を支え、手作業を支えるために体中の筋が等尺性収縮を起こしています。その結果筋への毛細血管が長いことつぶれた状態が起こり、筋の異栄養状態が生じてしまいます。最近は座業の仕事が増えて、長時間パソコンの前にいることが多く、そのために色々な不調が出てきています。
体のコリや痛みを感じる方は当院をお訪ね下さい。
つくば市 腰痛・痛み マッサージ・はり・運動療法
みどりの鍼灸院
次回はコリの出やすい箇所、スポーツ活動で生じる問題について紹介します。