
1.肩甲骨の特徴
前回の肩甲骨はがしで説明したように、人間の肩甲骨は背中についていて胸郭の上をすべるように動きます。上肢を動かすと肩甲骨もそれに伴って動きますが、人間の場合動物と違って上、下、前、後ろ、外側、内側等色々な方向に上肢を動かすことができます。そのことで獲物や食べ物に手を伸ばしたり、遠くの獲物を槍や石を投げ倒したりして、四つ這い移動の動物に比べ有利に働いてきました。それに伴い肩甲骨も色々な方向に動くようにできています。
肩甲骨の運動方向の名称が多くあるのは前々回に乗せましたが(1肩甲骨の動き図1)、そのほか肩甲骨の内側が胸郭から離れるようにも動きます(前々回 肩甲骨はがし)。
肩甲骨の動きが悪いと上肢の動きが制限され、狭義の肩関節(肩甲上腕関節)や肩を動かす筋肉に無理がかかったりします。
2.肩関節(肩甲上腕関節)の特徴
解剖学的には肩甲上腕関節は球関節に分類されますが、下肢は歩くことにほぼ特化されていますので関節は深い球関節になってがっちりと体重を支えています(図2)。上肢は色々な方向に動くため肩甲骨とは接している程度で浅い球関節になっています(図1、前々回 図2)。そのため肩関節のほうが脱臼しやすいのです。
出典:金子丑之助著「日本人体解剖学 第一巻」、南山堂、1956 図1.肩関節
上腕骨骨頭は肩甲骨の関節窩に接し、
上は肩峰がかぶさっている。
出典:金子丑之助著「日本人体解剖学 第一巻」、南山堂、1956 図2.股関節
3.肩甲骨についている筋肉
多くの筋肉が肩甲骨についていて色々な方向に動かすことができます。肩甲骨と上肢の動きに関係する主な筋を表1に示します。
| 表層筋 | 肩甲骨に対する働き | 深層筋 | 肩甲骨に対する働き |
|---|---|---|---|
| 僧帽筋上部 | 挙上 | 肩甲挙筋 | 挙上、下方回旋 |
| 中部 | 全体として肩を後方に引く | 棘上筋 | 三角筋を助ける |
| 下部 | 下牽 | 大小菱形筋 | 内側上方 |
| 三角筋 | 上肢を水平まで上げる | 小胸筋 | |
| 棘下筋 | 上肢外旋 | 広背筋 | 上肢を後ろ内側に引く |
| 小円筋 | 上肢外旋 | ||
| 肩甲下筋 | 上肢内旋 | ||
| 大円筋 | 上肢を内側後方に引く | ||
| 前鋸筋 | 下角を前外側に引く | ||
| 上腕二頭筋 |
4.上肢の動きと肩甲骨の動きとの関係
| 上肢の動き | 肩甲骨の動き | 主動作筋 |
|---|---|---|
| 肩関節屈曲初期 | 外転,上方回旋 | 前鋸筋 |
| 90° | 挙上、後傾 | 前鋸筋、僧帽筋上部、肩甲挙筋 |
| 最終域 | 後傾、下制、内転 | 僧帽筋下部 |
| 肩関節外転初期 | 内転 | 僧帽筋上部・中部 |
| 90° | 挙上、上方回旋 | 僧帽筋上部・中部、肩甲挙筋 |
| 最終域 | 上方回旋 | 僧帽筋下部 |
次回は肩甲上腕リズムについて説明します。


