
「東洋医学はなぜ効くのか」山本高穂 大野智 BLUE BACKSの成書を中心に私見を交え説明してゆきます。
松尾芭蕉「奥の細道」の出だしに足三里に灸をし、旅に出ると書かれています。あるツボへの灸が体を養生し旅の準備に大切ということです。また慢性炎症(関節リウマチ、炎症性腸疾患、慢性痛)は様々な病気を引き起こし、鍼灸治療は、免疫細胞の働きを調節する作用があります。
免疫は2種類に大別されます。
1.自然免疫
免疫の世界にはたくさんの細胞がいますが、その中でもマスト細胞と肥満細胞は特に「炎症を引き起こすスイッチ」を持つ重要な仲間です。普段は組織の中に静かに潜んでいますが、アレルギーのときや感染のときに活動します。これらの細胞は顆粒と呼ばれる小さな粒を複数抱えており、刺激を受けるとそれを外へ放出します。放出される物質にはhistamineや他の炎症性物質があり、血管を広げ、周囲の組織に液体が入り込みやすくして炎症を起こします。
また自然免疫は好中球、NK細胞、マクロファージが関係しています。
鍼で刺激すると➡炎症性サイトカイン、プロスタグランジンが放出され➡血管壁の細胞同士の隙間が広がり血液中の免疫細胞が炎症部分に出てきやすくなります。また白血球(好中球)を呼び寄せるケモカインが産生され➡その結果炎症反応が生じます(図1)。

鍼刺激はその反対の働きもするのです(図2)。
つまり鍼治療をすると➡体性―自律神経反射(体の表面の刺激により内蔵に反応を起こす)が生じ➡アセチルコリンがマクロファージをM2に変化させます。
(注) M1マクロファージは炎症を引き起こし細菌やウィルスなどを排除する物質を産生。
M2マクロファージは炎症を抑え細胞分裂や修復を調節する物質を産生。
損傷された組織を再生させるにはいったんわざと炎症を起こさせ、再生過程をやり直させる必要があります。つまり強めのマッサージや鍼刺激は炎症を亢進させ、損傷した組織を再生させる作用があります。

2.獲得免疫(図3,図4)
生体に備わった自然免疫ではなく獲得される免疫もあります。
病原菌が体内に侵入すると、ヘルパーT細胞が胸腺から放出され➡ナイーブT細胞に変わり➡病原体の種類に応じてエフェクタ―T細胞(Th1、Th2、Th17)に分化します➡それらがそれぞれがターゲットとする病原菌への免疫反応を起こします。
ヘルパーT細胞に存在する制御性T細胞は➡エフェクタ―T細胞を抑制し免疫反応を適切に制御するので➡自己免疫疾患(体にある免疫が過剰になり自分自身の組織を破壊する疾患)である関節リウマチ、アレルギー疾患、炎症性腸疾患などを制御します。
鍼灸治療はヘルパーT細胞の分化を制御し、Th1などや制御性T細胞の数の不均衡を是正したり、働きを活性化したりするといわれています。


鍼に興味のある方は当院をお訪ねください。
次回は「東洋医学はなぜ効くのか」―鍼灸刺激が免疫細胞に作用する経路―についての説明を紹介します。
