膝の内側、外側、裏側に痛みを出す代表的な疾患について説明してゆきます。
膝の外側の痛み
■ 腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)
膝の外側の痛みで代表的な疾患は腸脛靭帯炎です。(図1)
出典:金子丑之助著「日本人体解剖学 第一巻」、南山堂、1956
腸脛靭帯は骨盤の横前にある大腿筋膜張筋が、大腿部と膝の外側を走り、膝のすぐ下の外側に付きます。膝の曲げ伸ばしを繰り返すと大腿骨の下の部分の外側の出っ張り(外側上顆)により摩擦が生じ炎症を起こす障害です。脚の形がまっすぐだと起こりにくいのですが、脚がO脚だと膝の曲げ伸ばしで摩擦が強くなります。
■ 外側側副靭帯損傷
膝の外側にある靭帯(外側側副靭帯)をけがで痛めることがあります。
膝の内側の痛み
■ 変形性膝関節症
変形性膝関節症ではO脚であることが多く、そのため膝の内側が押しつぶされて、痛みを出します。
■ 内側側副靭帯損傷
膝の内側にある靭帯(内側側副靭帯)をけがで痛めることがあります。
■ 鵞足炎(がそくえん)
膝の屈伸を繰り返すと大腿骨の下の部分の内側の出っ張り(内側上顆)との間で擦れ合い炎症を起こすのが鵞足炎です。特に脚の形がX脚だと摩擦が大きくなります。縫工筋、薄筋、半腱様筋は筋膜と癒合して膝の内側のすぐ下で鵞足になります。(図2)
出典:金子丑之助著「日本人体解剖学 第一巻」、南山堂、1956
ー 対処法 ー
腸脛靭帯炎はO脚を矯正するような方法をとります。
鵞足炎に対してはX脚を矯正してゆきます。
膝の側副靭帯損傷は損傷の程度により対応してゆきます。
変形性膝関節症、O脚については次回説明します。
膝の後ろの痛み
■ ベーカー嚢腫(のうしゅ)
中年の女性に多く見られ膝の裏にある関節液(滑液)という液体を含んだ滑液包が炎症を起こし膨らむ病気です。関節液がたまる原因には、関節リウマチ、痛風、加齢による変形性膝関節症、ランニングなどによる膝の使い過ぎや、体重増加などがあります。
悪性ではありませんが、症状としては、膝裏の腫れ、違和感、不快感などがあります。痛みは強くなりにくい特徴があります。
■ 筋の硬結
そのほかふくらはぎの筋(腓腹筋、ヒラメ筋)の膝に近い部分に筋硬結があると力が入ったりしたとき痛みを生じます。
膝の靭帯損傷、半月板損傷
■ 靭帯損傷
膝の靭帯は大きく①関節の外にある靭帯と②関節の中にある靭帯に分類できます。①には膝の両側についている内側側副靭帯と外側側副靭帯があります。また②には前十字靭帯と後十字靭帯があります。
内側と外側側副靭帯は膝を伸ばした位置で、膝が外側や内側に曲がらないようにします。前十時と後十字靭帯は膝の前後方向やねじれの安定を担います。
これらの靭帯をスポーツ、交通事故等で損傷することがあります。
■ 半月板損傷
また膝関節の中には半月板があります。半月板は大腿骨と脛骨の適合性を高め、荷重を分散し、衝撃を吸収し膝関節を制動します。これらの組織を損傷するのはスポーツによる場合と、加齢により傷つきやすくなっている半月に軽い外力が加わっても損傷する場合とがあります。
半月板の損傷が疑われる場合は整形外科の受診が必要です。半月板は単純X線(レントゲン)写真では写りません。診断として、徒手検査や症状の経過からも予測可能ですが、症状や診察で半月損傷を疑えばMRI検査を行います。MRIは非侵襲性で半月損傷の病態や合併する靭帯損傷の診断にも有用です。半月板損傷は、その程度や病態により保存的に治療したり、手術を行ったりします。
はっきりした原因疾患がなく膝の痛みがなかなか収まらない方は当院をお訪ね下さい。
つくば市 慢性腰痛・痛み専門 マッサージ・はり・運動療法
みどりの鍼灸院
次回はO脚、変形性膝関節症についての説明になります。