ストレッチは有効な手段ですが、限界があります。
前々回にも載せましたが筋や軟部組織の硬いところは循環が悪く痛みを生じやすくなりますが、筋全体をストレッチする方法では硬いところは伸ばされず、その周辺の正常な柔らかいところが伸ばされてしまう可能性があります。(図1)
筋連結の問題もあります。筋は骨から骨にだけついているわけでなく、筋の一部は隣接する筋に接続しています。(図2)従って筋全体をストレッチすると筋連結している筋線維は接続している筋を引っ張り、効果的に伸ばされなくなります。
以上のことからストレッチングだけでは目的の筋線維を十分に伸ばすには限度があることになります。上記のストレッチングの欠点を補う方法として筋の揉捏法(筋をもむ)は引き延ばしたい筋をピンポイントで狙ってより効果的に引き延ばすことができます。
あん摩・マッサージの手技と方法
あん摩・マッサージ・指圧は、治療を目的に、手や指等で、もむ・さする・おす・たたく・ふるわせる・引っぱるなどにより血液循環を改善し、新陳代謝を促し、痛みをとり、リラクゼーションを起こします。
あん摩・マッサージの一般的効果は表1になります。
血液循環促進。
疼痛部位の筋神経の興奮性を鎮める。
神経や筋・内臓に反射的刺激を与える。
患部の出血・滲出物・浮腫・腫脹を誘導し吸収促進する。
筋や腱・靭帯等の軟部組織を緩め伸ばす。
表1.あん摩・マッサージの効果
手技は色々ありますが、手技別に見た方法と効果は表2の通りです。
手技 | 方法 | 効果 |
軽擦法 | 皮膚の表面をさする | 鎮静を誘起し疼痛による筋スパズムを抑制する。 |
揉捏法 (圧迫・摩擦法) | 筋を圧迫擦過して線状または輪状にもむ | 局所の循環動態を改善し、強く行うと炎症反応を誘起する。 |
圧迫法(指圧) | 体をゆっくり押し、ゆっくり離す | 筋病変及びその近傍組織の循環を改善する。 |
叩打法 | こぶしや手のひら、指等で体の表面をリズミカルに軽くたたく | 叩くことで神経や筋肉を刺激し、血液の流れを改善し、リラクゼーションが起こる。 |
振戦法 | 押すあるいはけん引した状態で細かに震わせる、あるいはゆする。 | 緊張した筋肉を緩めることで痛みの緩和、リラクゼーション、血液の流れやリンパ液の流れが改善される。 |
牽引法 | 関節を引き離す | 関節内圧を下げ、軟部組織をストレッチすることで可動域や痛みを改善する。 |
損傷筋にあん摩・マッサージを行うと出血像の消失、線維形成が筋線維間に現れない、血管周囲の線維増殖がない、筋が正常になり太くなるなどの効果があります。
あん摩・マッサージの適応と禁忌は表3のようになります。
適応 | 禁忌 |
間質浮腫や関節水腫の軽減 麻痺筋の循環促進 硬化筋の緩和 癒着組織の改善 組織の耐圧性強化 疼痛の緩和 特定部位や全身のリラクゼーション 心理的効果 | 悪性腫瘍 開放創 深部静脈血栓 感染組織 |
鎮痛効果について
あん摩・マッサージやストレッチには軟部組織の鎮痛効果があります。生体に備わっている鎮痛メカニズムにはどのようなものがあるのでしょうか。
下行性疼痛抑制系 | 脳幹から脊髄(延髄)の後ろのほう(後角)に痛みの情報が伝わります。体表に加えられた痛み刺激の情報は脊髄の後角に伝わり脊髄を上行し脳に伝わり痛みとして自覚します。この後角の部分で痛みの伝達を抑制する神経系があります。 |
広汎性侵害抑制調節 | 足を角にぶつけたときに、他の部位を強く押すことで痛みが楽になるということがあります。ある部分の痛みがその部位以外の手足などの軟部組織に与えられた痛み刺激により抑制されるという現象です。 |
内因性オピオイド鎮痛系 | 生体には強烈な痛みから生体を保護する仕組みがあります。手足等に受けた痛み刺激の情報が大脳で痛みとして知覚されるまでの間に、途中のいくつかの部位で麻薬様鎮痛薬が出て抑制される仕組みがあります。 |
非侵害刺激抑制 | 非侵害刺激とは痛みとして感じない程度の刺激を言います。触刺激などに関与する神経を刺激すると、脊髄後角で痛みを受け取る神経を抑制する現象です。非侵害刺激として電気刺激、鍼、マッサージなどの圧刺激や触刺激などがあります。ホットパックや過流浴などの温熱刺激は血流増加などの効果がありますが、非侵害刺激抑制の効果も考えられます。 |
臨床では筋硬結をあん摩・マッサージでピンポイントに軟化し、そのあとで対象筋全体のストレッチを加える方法が効果的と思われます。
あん摩・マッサージをご希望される方は当院を訪ねください。
つくば市 腰痛・痛み マッサージ・はり・運動療法
みどりの鍼灸院
次回はヘッドマッサージについて説明します。