ここでは「理学療法ハンドブック改訂第4版 第2巻 治療アプローチ 共同医書出版社 2011」の中の「第33章 関節モビライゼーション 藤縄理」の内容を中心に私見を交え概説します。
1.関節モビライゼーションの種類
今までにオステオパシーやカイロプラクティック等様々な方法が提唱されていますが、理論に無理のないと考えられるものだけを紹介します。
*痛みの出ない範囲で段階的に振動する(Maitland)
*痛みを出す方向と反対側への運動をする(Maigne)
*主に四肢の関節の正常な遊びを回復させる(Mennel)
2.副運動(関節の遊び)
副運動とは、大部分の関節にある、わずかな他動的、不随意的運動で「関節の遊び」ともよばれます。例えば肩甲上腕関節では、上腕骨は他動的にわずかに前後、内外、上下に動きます。過度な副運動が感じられる場合は、靭帯の損傷や異常な緩みを疑います。
3.モビライゼーションとマニュピュレーション
狭義の関節モビライゼーションは副運動や関節の遊びを徒手で他動的に出すため、比較的大きい振幅で遅いスピードで行います。狭義のマニュピュレーションは関節をゆるみのない緊張状態にしておき、小さい振幅で速いスピード(スラスト)で動かす方法ですが、この方法は骨の状態が悪いと危険があるので、骨の情報を知らずにやらない方が良いと思います。
4.モビライゼーションの対象
*疾病によって生じた機能異常
*副運動が過可動性にある関節に近接して低可動性関節があります。過可動性の関節はスタビライゼーション(安定化)を行い、低可動性の関節にはモビライゼーションを行います。
5.主な関節のゆるみの姿位と締まりの姿位
関節は他動的に動かしたときに副運動が大きい姿位(ゆるみの姿位)と、少ない姿位(締まりの姿位)があります。
ゆるみの姿位はその関節を包んでいる袋(関節包)がどの部分も緊張していない関節角度をさします。主な関節のゆるみの姿位と締まりの姿位を表1に挙げます。
関節 | ゆるみの姿位 | 締まりの姿位 |
---|---|---|
椎間 肩 手根中手 中手指節(Ⅱ~Ⅴ指) 股 膝 距腿 | 屈曲伸展中間位 55°~70°外転、30°水平内転 中間位から軽度尺屈 外転-内転、屈曲-伸展の中間位 30°屈曲、30°外転、軽度外旋 25°屈曲 10°底屈、外反内反中間位 | 伸展 外転、外旋 尺屈位からの伸展 (―) 完全伸展、内旋、(外転) 完全伸展、脛骨外旋 (―) |
5.関節包内運動の検査
関節をゆるみの姿位にして、離開、滑り、圧迫などを行います。
6.関節モビライゼーションの治療原則
*痛みの治療は振動法(2~3ヘルツの滑らかで規則正しい振動を1~2分)
*関節の遊びがなく、可動域が減少している場合は持続的伸張法が適している。
*痛みの場合は10秒間の間欠的離開。
*制限のある関節には伸張(6秒)、緩める(3~4秒)を繰り返す。
*関節の可動域を増したい方向に牽引する場合はゆるみの姿位とは無関係になります。
次回は脊柱、股関節の徒手によるモビライゼーション、牽引について説明します。
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