「東洋医学はなぜ効くのか」(4)脳の神経伝達物質を操る

庭で咲いたシャクヤク

「東洋医学はなぜ効くのか」山本高穂 大野智 BLUE BACKSの成書を中心に私見を交え説明してゆきます。

1.鍼灸刺激で活性化する大脳の部位は以下のようになります(図1)

  1. 一次体性感覚野は感覚情報の処理をする部位です。
  2. 運動野は体を動かす信号の源です。
  3. 前帯状皮質は血圧、心拍、情動にかかわります。
  4. 島皮質は痛みや情動に関連する部位です。

2.鍼灸で活動が低下する大脳の部位は以下のようになります(図1)

  1. 内側前頭前皮質は感情のコントロールにかかわります。
  2. 扁桃体は視床下部の下にあり、恐怖や不安などの情動を処理します。
  3. 海馬は扁桃体の下にあり、恐怖や不安などの情動の記憶をします。

鍼灸刺激はこれらの活動を弱めることからリラックスした状態をつくります。

図1.脳の名称

3.ドーパミンの調節

鍼灸刺激をすると➡ドーパミンが産生され➡意欲や幸福感が増します。しかしドーパミンは多すぎると依存症の恐れが出てきます。

鍼灸は同じ刺激でも病気や症状による神経系の違いによってインパルスの経路や神経伝達物質の量などが変わり、正常な神経活動状態へ戻す作用があります。つまり多すぎると減らし、少なすぎると増やしちょうど良い方向に持ってゆく「中庸」という作用があります。

鍼灸はドーパミンの過剰な分泌を抑える働きもあり、アメリカでは薬物中毒やアルコール依存症の治療にも使われています。

4.セロトニン分泌

セロトニンはストレスに対抗する神経伝達物質で、ドーパミンなどと連携して生体リズムや睡眠、食欲、体温調節、認知などを調節し、気分・情緒・痛覚をコントロールして精神を安定させる作用があります。

鍼灸刺激が➡延髄大縫線核(中脳からの脳幹の内側部に分布する細胞集団)から➡脊髄後角に伝わりセロトニンを分泌します。

このような作用からイギリスではうつ病に対して鍼灸治療を行っています。

うつ病に効果があると思われるツボとして、百会(頭のてっぺん)、天柱(後頭部の下)、身柱(胸椎)、心兪・肝兪・腎兪(脊柱の横)、神門(手首の尺骨側),中脘(おなか)などがあります。

5.オキシトシン(幸せホルモン)分泌

オキシトシンは出産、授乳、母子関係、性行動、ストレスや不安の軽減、共感、信頼、鎮痛にかかわるホルモンで、刺激の強さで分泌量が変わります。

ローラー鍼(突起のあるローラーを皮膚上で転がす。図2)、接触鍼(鍼先を皮膚に当てる。図3)、マッサージ、タッチケアで分泌が高まります。

図2.ローラー鍼。主に小児に使われ、気持ちがいいものです。
図3.接触鍼

6.視床下部―下垂体―副腎皮質系(HPA軸)

好ましくない物理的刺激やストレスがかかると➡視床→下垂体→副腎からストレスホルモンである副腎脂質ホルモンが分泌されます。➡それが血管で全身へ運ばれ➡血圧や血糖値を挙げます。➡その結果脳や筋肉などの活動が増し、胃酸の分泌が増えます。その反応は闘争や逃避に有利な反応です。

慢性的にストレスがあると➡高血糖値が上がり➡糖尿病、肥満、うつ病・免疫機能異常(副腎皮質ホルモン)につながります(図4)。

図4.好ましくないストレスや物理的刺激による副腎皮質ホルモンの分泌

鍼灸(足三里、百会というツボへの円皮鍼)は➡HPA軸の過剰活動をやわらげる作用があります。またオキシトシンやセロトニンを分泌するような方法がいいと思われます。

(注)円皮鍼(えんぴしん)は、置き鍼とも言い、直径1〜1.5cmほどの小さなシールの中央に、長さ0.3〜1.6mmの極細の鍼が付いた貼るタイプの鍼です。皮膚に軽く接触させるだけでツボや経絡を持続的に刺激できます。

鍼灸・マッサージは刺激する方法や部位がいろいろあり、従来から多岐にわたる疾患に対しての効果が言われています。科学的な検証を重ねて、より科学的な分野にしてゆく必要があると思われます。鍼に関心がある方は当院をお訪ねください。

つくば市 腰痛・痛み マッサージ・はり・運動療法

みどりの鍼灸院

次回は「東洋医学はなぜ効くのか」―鍼の自律神経に対する影響―の説明を紹介します。

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