肩の痛み④不安定肩症(ルーズショルダー)の原因と対策

庭の池で咲いたホテイアオイの花

不安定肩症(ルーズショルダー)とは?

なんとなく肩が緩い、コンセントを抜くときに肩が抜ける感じがある、特にけがをしなかったのに何回も肩の脱臼が起こる、というような人は、不安定肩症(ルーズショルダー)の可能性があります。

■ 原因と病態

肩関節は上腕骨と肩甲骨からなる関節で、接触面が小さく不安定で、関節を包む袋(関節包)や上腕骨骨頭が収まるくぼみ(関節窩)の縁にある関節唇という軟部組織(静的安定化機構)に支えられています。そのため可動域は大きいのですが、固定する力が弱い状態にあります。

肩甲上腕関節
図1.肩甲上腕関節(狭義の肩関節、関節窩のふちを
取り囲むように関節唇がついており骨頭を受ける
くぼみを大きくすることで脱臼を防いでいる。)

この不安定肩症は肩回りの筋肉が弱い方や肩を継続的に酷使する方、遺伝性での発症がみられます。

図1の静的安定化機構だけでは脱臼を防ぐには不十分なため、腱板筋や上腕二頭筋という筋肉(動的安定化機構)が肩関節の安定化にかかわっています。腱板筋とは、「棘上筋」「棘下筋」「小円筋」「肩甲下筋」の4つの筋腱の総称で、上腕骨頭を取り巻くように付着し、肩甲骨の関節窩に上腕骨頭を安定して納める役目をしています。

■ 治療法

腕を動かす強大な筋として肩にある三角筋と胸にある大胸筋があります。これらはアウターマッスルといいパワーを出すときに必要な筋です。しかし三角筋が働くと上腕骨骨頭が関節窩の上方に動いてしまいます。つまり腕を動かすときの支点がぐらっと動いてしまいます。その結果腕を上げると肩が詰まったような感じになり十分な力で腕を上げにくくなります。大胸筋が働くと上腕骨骨頭が前方に動いてしまい、大胸筋のパワーを十分に発揮しにくくなってしまいます。

そうならないように、骨頭を関節窩に押さえつけるために腱板の筋が働きます。このように上腕骨骨頭を関節窩に安定して納めておく筋が肩のインナーマッスルです。腕の挙上については棘上筋が骨頭を安定化します。骨頭が前に行かないようにするのは肩甲下筋です。図2はその模式図です。

インナーマッスルとアウターマッスルの力の方向の関係
インナーマッスルとアウターマッスルの力の方向の関係
図2.インナーマッスルとアウターマッスルの力の方向の関係

インナーマッスルとアウターマッスルが程よくバランスを持って働けば最高のパーフォーマンスを発揮することができます。

ところがアウターマッスルは普段容易に鍛えることができますが、インナーマッスルだけを強化することは難しく、また五十肩で見られるように腱板筋は痛みやすい面があります。なぜかというと棘上筋は肩甲骨の骨に囲まれており、棘下筋は肩甲骨を下に敷いた状態になっています。肩甲下筋は肩甲骨と肋骨の間に挟まれており、それらの筋が収縮すると筋圧が高まりやすくなり、血流が途絶えやすくなる傾向があります。

腱板筋が痛むことでインナーとアウターのバランスが崩れ、アウターの十分なパワー・スピードを発揮できない状態になります。不安定肩症は腕を使うと骨頭が不安定になり、症状が出てくると考えられます。従って運動療法として上腕骨骨頭を関節窩に安定させる機能を持つインナーマッスルを中心に強化するとよいと思います。

このほかにも不安定肩症の原因がありますので、不安定肩症の対処法やインナーマッスルの強化法、その他の原因についての詳細は当院をお訪ね下さい。


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みどりの鍼灸院


この回で肩の話をいったん終了します。次回は膝について解説します。


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