「東洋医学はなぜ効くのか」(1)末梢での鎮痛作用

新潟村上の低山に咲く春蘭

山本高穂、大野智著「東洋医学はなぜ効くのか」、BLUE BACKS.は大変な力作で、学術性の高い成書です。8回かけてこれを中心に、私見も交え説明してゆきます。

ツボ(経穴)刺激が鎮痛に作用する3つの場所として末梢、脊髄、脳があります。

3つの場所で生じる様々な作用が組み合わさることで効果を生み出すと考えられています。

鎮痛効果に関係する末梢は、具体的には末梢神経、筋肉、皮膚や筋肉から分泌される鎮痛物質、ATP(アデノシン三リン酸)であり、これらについて説明します。

1.末梢神経、鎮痛物質

1)軸索反射(図1)

鍼をすると周りが赤くなる現象(フレア反応)があります。そのメカニズムは以下の如くなります。

鍼の刺激により➡皮膚や筋肉の感覚受容器に入った情報が脊髄に向かって神経線維(軸索)を伝っていくときに、途中にある小さな分岐(軸索側枝)に伝わり➡皮膚の表面近くにある感覚神経を刺激し➡神経性炎症を起こし➡神経伝達物質(サブタンスP、CGRP)が放出され➡周囲の血管が拡張し透過性が亢進します。これが刺激部位周囲が赤くなる(フレア反応)機序です。

図1.軸索反射によるフレア反応

筋硬結がある部位は血行不良の状態にあります➡その結果筋肉や血管で酸欠状態になり➡細胞が微細損傷され➡炎症反応であるブラジキニン・ヒスタミン(発痛物質)やプロスタグランジン(発痛増強物質)を放出し感覚神経を刺激するため➡痛みやコリ感が発生します。

軸索反射により血流が増加し➡局所的に発痛物質が除去されます。

2)体内麻薬(内因性オピオイド、図2)

体内麻薬は内因性オピオイドといい、生体に受けた痛み刺激を和らげるために体内で産生される物質で、図2のような特徴があります。鍼や電気刺激、マッサージなどの麻酔的徒手的手技で活性化し鎮痛効果を生じます。

図2.体内麻薬の特徴

損傷部位でも内因性オピオイドは生じ、その損傷部位でのメカニズムは以下になります。

炎症や組織の損傷のある部位に➡免疫細胞(好中球、単球、リンパ球)が集まっており
➡そこに新たなストレス(鍼刺激など)が加わると➡免疫細胞に内蔵されているオピオイドが放出し➡感覚神経の末梢にあるオピオイド受容体と結合し➡神経の興奮を鎮めます。

3)腱紡錘(ゴルジ腱器官、図3)

腱紡錘は筋肉の腱にある受容器で、強く引っ張られると活性化し、Ⅰb神経線維を通り情報が脊髄に伝わります。情報は脊髄のα運動神経に伝わり、筋線維の弛緩が起こります。

図3.筋紡錘と腱紡錘

このメカニズムは鍼刺激でというより、強いストレッチやマッサージで生じると考えられます。

2.ATP(アデノシン三リン酸)

ATPは運動のエネルギー源である物質ですが、細胞へのストレス刺激などにより細胞外へ放出されることがあります

このアデノシン化合物は心筋・血管・内臓壁の平滑筋、脳、腎臓、血小板、白血球などのアデノシン受容体(4種類ある)に作用して様々な生理作用をもたらします。アデノシン受容体のうちのA1受容体は鎮痛にかかわります。

以上のことから徒手的な刺激は、コリのある所を圧迫し和らげることで鎮痛物質のもとである血流を促し、しかも反応が起こるような強さであるほうが鎮痛効果があると考えられます。鍼刺激も軸索反射だけでなく、コリ部分に刺入することで血液の流入を促しているのかもしれません。

次回は「東洋医学はなぜ効くのか」―(2)脊髄での鎮痛作用―についての説明を紹介します。

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