
「東洋医学はなぜ効くのか」山本高穂 大野智 BLUE BACKSの成書を中心に私見を交え説明してゆきます。
1.下降性疼痛抑制系(図1)
「下降性疼痛抑制系」とは痛みを脳から末梢にかけて調節してゆく系を言います。
大脳皮質や脳にある扁桃体などから痛み情報の指令を受ける系です。
これには「中脳中心灰白質(PAG)を起点として始まる2つの系があります。
- ノルアドレナリン系
恐怖・不安・痛みにかかわります。系の終点の脊髄後角でノルアドレナリンを放出して痛みの情報伝達をブロックします。 - セロトニン系
食欲・性行動・学習・記憶・痛みにかかわります。系の終点の脊髄後角でセロトニンを放出して痛みの情報伝達をブロックします。

鍼灸刺激をすると➡脳で内因性オピオイド(脳内麻薬)を分泌します➡その結果脳のPAGや青斑核(ノルアドレナリン系)、延髄大縫線核(セロトニン系)の活動を高め➡ノルアドレナリン、セロトニンが脊髄後角に行き➡抹消から伝わってきた痛み信号を伝える神経細胞間の伝達(シナップス)を阻害するので➡「痛覚変調性疼痛」や「慢性疼痛」を改善します。

心理的なストレスが痛みにどのような影響を持つかについては、心理的ストレスを受けると➡脳の扁桃体が活性化し➡PAGの働きを抑制する神経が活性化します➡その結果下行性疼痛調節系の鎮痛作用が弱まるため➡痛みが感じやすくなります。
下行性疼痛抑制系は脳につながるすべての脊髄後角に入る痛み刺激に作用するため➡鍼刺激が傷害部位から離れた部位へ治療効果を出す理由の一つと考えられます。
2.鍼による低周波刺激(図3)
低い周波数(1~9ヘルツ)で鍼通電をすると➡βエンドルフィン・エンケファリン(脳や脊髄にあるμ受容体とδ受容体に作用)が分泌され➡痛みの信号を抑制します。特にPAGにはμ受容体とδ受容体が多く存在するので➡下行性疼痛抑制系を促進します。
βエンドルフィンは下垂体の周りの血管を介して全身をめぐり、その状態続くため効果は遅いが持続します。
高い周波数(50~200ヘルツ)での鍼刺激では➡ダイノルフィンが分泌され➡脳や脊髄のカッパー受容体に作用し痛みを抑制します。しかしこれは即効的だが持続しません。

3.視床下部と交感神経を介した鎮痛(交感神経―副腎皮質系、図4)
交感神経が興奮すると➡筋肉が緊張したりや血管が収縮したりします➡その結果筋肉のコリが生じます➡その結果疼痛物質であるプロスタグランジンやヒスタミンが滞留します。
鍼刺激をすると➡その刺激は視床下部にいき➡交感神経活動が低下し➡アドレナリンが減少し➡血管が拡張し➡痛み物質が除去されます。心と関係のある交感神経と体の現象である痛みとが関連しており、心と体は関連があるという(心身一如)の考えに通じます。
抹消部分に問題のない自律神経の乱れなどには、全身マッサージや低周波刺激など、気持ちをリラックスさせる刺激などが効果的かもしれません。

鍼に関心のある方は当院をお訪ねください。
次回は「東洋医学はなぜ効くのか」―鍼の脳に対する影響―についての説明を紹介します。
